アリオトサイド。
…突発ですみませんがだーっと序章じみたことだけとりあえず。短いです。
本家でスレ立ってます、イベント「アドニア偽見合い」です。
とりあえずアリオト視点で順々に状況を追っていこうと思います。
ここではアリオトの同僚の兵士Aが出てますが。
また侍女がどうのって言ってますが…
…これらの人々もグルってことでいいでしょうかね?笑
今後、お見合いイベント前後でアドニアの人々以外にも出てもらおうかなと。
とりあえずうちの奴の予定では、ヴェイタ。うーんどうしたもんか
そのうちラクガキもしてみたいなぁ…
「…え?」
我ながら、間の抜けた声が出たと思う。
別に寝耳に水、という訳ではなかった。
少し前に--廊下で、侍女が噂しているのをちらりと聞いたから。
だがそれは単なる噂話。根も葉もない。真に受ける訳もなかった。
それにいつかは--訪れると分かっていた。別に驚く程のことではない、そうだ。
…姫様なのだから。
「アリオトにしては随分と力の抜けた声を出すんだな。
ま、無理もないか。いよいよあのシーリィン様が結婚だもんな。
どこのどいつが相手かは知らないが、うまく行くと良いよなぁ」
「…結婚じゃないだろう。見合いだと言ったのはお前だ」
「ああ、まぁそうだけど。とりあえず、一応報告。あ、一応これ極秘情報だからなー。じゃあな」
「…分かってる」
軽く笑って、同僚であり、警備の奴は俺とは反対方向の見回り巡回に戻っていった。
奴の持っていた灯りと、その靴音は廊下の奥に消えていき、
辺りは先程までのように静寂に包まれた。
…仄かな月の光と、俺自身が手に持っている灯りだけが、足元を照らしている。
…ゆるく吹く風が心地良い。
「…婚儀、か…」
ふ、と独り言が漏れる。
…つい先程、奴に見合いだろうと正したのは自分自身だ。
だが頭の中では、そんなものは一足飛びに進んでいる。
…俺は何を考えているんだ。…姫様に…無礼だ。
噂をしていた侍女も。
さっき聞いたんだ、と浮き足立って俺に報告してきた奴も。
笑っていた。…嬉しそうだった。「うまくいくといい」と、顔を綻ばせて。
皆、この話を祝福している。喜ばしいことだ、俺だってそう思う。
…姫様が幸せになるのなら。
陛下を誰よりも支え、誰よりも国を想い、そして誰よりもお優しい…あの方を。
一心にお護りし、支えてくれるのなら。
俺も…心より祝辞をお送りしたい。
願わくば…見合いの相手が、そういう方だと良い。
あの方と見合いをする程の方だ。…陛下にもこの話が通っているはず。ならば心配の必要はない。
きっと…いいご縁談なのだろう。
姫様のお気持ちはどうなのだろう。
以前よりご友好であった方なのだろうか…?
相手の方はどのような方なのだろう。
この縁談の申し込みも、その方からなのだろうか。
それとも-----
そこまで考えて、普段では考えられない程自分が無防備になっていたことに気付いた。
…何をやっているんだ、俺は---
そんなこと…一家臣である俺が、知る必要も資格もない。
訳の分からない感情のまま、とりあえず一息吐く。
どうかしている…きっと疲れているんだな。
…明日に支障が出る。早く休もう。
踵を返し、巡回へ戻る。
灯りが一瞬、凪いだ風に吹き消されそうになった。
…月のきれいな、静かな夜だった。