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長いこと間があいてしまいましたが。

イズさんのちょう素敵小噺の続編、というものであります。

イズさんにご許可いただきまして、
イズさん宅のそのお話とリンクさせていただきますです↓

http://makibisi.blog.shinobi.jp/Entry/123/   前編

http://makibisi.blog.shinobi.jp/Entry/124/   中編

http://makibisi.blog.shinobi.jp/Entry/127/   後編

にまめちゃん…タイトルつけてヨ!笑

イズさんの文章力に比べて私ほぼ会話で申し訳ない感じなんですが@@

よろしければ。…↑の3編を読んでいただいてから…!



はずかしい

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いつもなら。
よく意味がわからないと、もう一度聞き返していた。

「もう一度言って」と。

けれど。

…その時のカイエの言葉は、。
聞き返してはいけないと思った。
 
多分、ううん、聞こえていた。解った。
 
彼は…『すき』と。言った。
 

 
「…あ…」
 
「……」
 
かすれた声が出た。言葉が出てこない。
 
さっきまで、彼はひどく心細そうだった。震えてさえいた気が、した。
あたしに何ができたかはわかんないけど、そんなカイエを安心させたくて。
それだけのことだったのに、彼はまるで別人になったみたいに、
つよく。そう、言った。
 
彼は、ほんのりとその普段色を持たない肌を、染めて。
あたしは……いつも理解できていなかったその意味を知る。

…ああ。そうか。
……そうだったんだ。

彼はあたしから眼をそらさなかった。

あたしも。…そらせなかった。

感情が。心が。何かを呼び覚ます。

なんでだろう。なんでだろう。

あたしは、そのとき。

 
一覇のことを想い出していた。
 
 

「…っと、あの、古登」

カイエが沈黙に耐えられなかったかのように小さくあたしの名を呼んだ。

ぴりっと真ん中に痛みが走った。
あたしの名。あたしのこと。…『こと』。

何故だかその時、あたしは理解した。
彼のことを。

何故…彼を求めていたのかを。

 
「古登ッ?」
 
不意に、カイエが驚いたように声をあげた。
そう、何故だろう。

あたしは泣いていたんだ。
冷たい。雫が顎から下へ落ちて、膝の上に置いていた右手の甲に、落ちた。

「…カイエ」
 
「な、に」
 
ああ。
こんな気持ちだったんだ。
こんな言葉だったんだ。
ごめん。
ごめんね。
ごめんね。
ごめん。

 
「…あたし」
 
「うん」
 
「…一覇がね。」
 
「え?」
 
「一覇のこと、解らなかったんだ」
 
「___」
 
「なんで…あたし、一覇、が、いなくなって。

 あたしを置いて、いっちゃったのか、わかんなかったけど。

 でも、その理由が何かとか、考えたけど、わかんなかったから。

 だから、それは、いいやって思って。会って、聞けばいいと思って。

 それで、ずっと、考える、のをやめてた」
 
「うん」
 
「でもそれは…こわかったからなんだ」
 
目の前のひとは、あたしの言葉を聴いてくれていた。
少し、困った顔をしていたけれど。それでも。

うん、って。
 
不思議だった。なんで、こんなに言葉が、溢れてくるのか。

自分の気持ちを言葉にするのは、大変で、つらくて、難しくて、かなしかった。
だから今まで―――久しくやめていたのに。
とめられなかった。
 
「でもね。今まで、何でかわかんなかったことがひとつ、…わかったんだ」
 
「…何?」
 
「何で…あたしが。一覇に。…置いていかれたくなかったのか」
 
「…っ」
 
「一覇がさ、いなくなって。あたしの腕と脚を奪って。
 『さよなら』って言った。お別れだって。

 ほんとに辛かった。…いやだって思った。
 全部なくした時から、拒絶する気持ちなんか忘れてたのに。

 ハルヤが、一覇を追おうとするあたしを押さえつけて、

 力いっぱい止めて『死ぬぞ』って言われて、それでも。

 膝から下がなくなった脚を引きずってでも、あの背中を見失いたくなんかなかった。

 行かないでって、叫んでた。血がとまらなくても。

 …行かないでって、…あたし、叫んでたんだ。」

 
カイエが少し、怒ったような、泣きそうな顔をしてるのがわかった。
あたしの右目からは、流れ続けてた。

熱を感じなくなって久しいその、眼から。

 
「ハルヤはね、言ってた。『お前があの野郎を追うことを、野郎は望んじゃいねぇ』って。

 きっとそうなんだと思う。もうとっくのとうに、あたしを嫌いなのかもしれない、一覇は」
 
「…ッ!」
 
「でもそんなこと、あたしには関係ないんだ」

 
いつの間にか立ち上がっていたカイエが、息を呑むのがわかった。
 
あたしは足元の水を眺めて。きらきらと流れていく桜牙の流れ。きれいだ。
不意に描いていた。陣を。初めて教わった、あの陣の形を。
 
「あたし」

 
光がこぼれて、あたしとカイエを照らした。

 
「…あたし…一覇のこと、……すきだったんだ」
 

それきり。

あたしは言葉が出なくって。ただ、陣が落としていく光の羽に照らされて。
とめどなく溢れていく熱い水をぬぐうことができなくて。

あたしは我慢できなくなって、立ち上がってカイエの服を掴んだ。強く。
そしたら、カイエは何も言わずにあたしを抱きしめた。
少しだけ、本当に少しだけあたしより背の高いカイエ。
少し乱暴にあたしの頭を自分の肩に押し付けて。
 
 
「…う…ぁ…ッああぁ」
 
「……」
 
カイエは何も言わなかった。

ただ、ただ離さないでいてくれた。

あたしはあの別れの時に流しつくした筈だった涙を。

止められなかった。

 
…もう時間がない。時間がないんだ。
一覇は、もう擦り切れる寸前だ。

もう。あたしにしかもうできない。

ハルヤは言った。『一覇の一族は、“混沌”を与えれば与えるほど命を削る』って。
 
だから。

きっともう片目で最後なんだ。きっと。“混沌”の連鎖は、もう途絶える。
一覇にはあとはもう、「終わり」しかないんだ。

…もう遅い。きっと。
…あたしが遅すぎた。
あたしが
あたしが


「…ッ古登!」
 
「っふ…?」

カイエは、あたしの髪をくしゃくしゃにしたまま。
あたしの顔を両手で挟んでその目線を合わせた。

初めてかもしれない。彼が…あたしを真正面から見たのは。
カイエの手が、あたしの肩に置かれた。かすかに、震えてた。

 
「古登。僕は…っきみが」
 
「…ぅ」
 
「…ッ今、なんできみを責めてんのかちっともわからない」
 
「…責め、て…?」
 
「そうだ。誰が見たってそうだ。

 なんだよ、目の前で一世一代の一生に一度かもしれない重い台詞を

 搾り出したっていうのに古登は僕が顔も知らない奴のことなんかを

 想って泣いてる!ここらでそろそろツッコんだって許されるはずだ!!」
 
「…??」
 
「ああもう僕は一覇のことなんか知らない!ほんとはもうとっくの昔に

 分かってたけど、きみが一覇のことがすきなんだってずーっと前から知ってたけど、

 すっごく知ってたけど!!でも口に出すなんて嫌だった、

 ほんとはきみがいつ自覚してしまうか怖かった、

 でもそんなこと考える時点で負けだから僕だって知らないふりとかしてたんだ!!」
 
「…ぇ、え?」
 
「…あー…かっこわる」
 
息を少し、切らせて。
カイエは下を向いてしまった。大きなため息が聞こえる。

少し、ぽかんとしてしまった。彼が…こんなにも、叫ぶなんて。
カイエが今言った言葉をひとつひとつ。…考える。

 
「…あのさ」
 
「?」
 
「…僕はまだ、返事はいらない」
 
「…あ」
 
「結果的に古登を泣かせたのは僕だ。きっかけを与えたって意味で。

 それで最終的にどう結論づけるかは、古登の自由だ」
 
「…カイエ」
 
「いい?古登。これだけは覚えといて。」
 
「う?」
 
「僕は、…古登がすき」
 

ずきんと、もう一度痛んだ。
身体があつい。…あつくて、顔が熱い。
 

「でも、古登がどうするかは古登の自由で、それは古登にしかわからない。

 僕は…一覇のことを何も知らないから、

 古登と一覇にしかわからないとこになんか、踏み込めないし、正直何したらいいかわからない。

 っつうか、僕はきっときみのことだってちゃんと理解していないんだ」
 
「……」
 
「古登は、ずるいよ」
 
ふ、と。
カイエが…笑った。やさしかった。
…ふわりと。…落ちていった。

「ずるいけど。まぁ、しょうがない。古登を追いかけてんのは、僕なんだから」

へへっと、小さく。もう一度笑う。
 
カイエの声は、びっくりするくらい、やさしかった。

ぼっ、と。自分のこめかみが熱くなるのがわかった。何これ、何これ。

…あつい。なんだろ、この気持ち。…ぎゅうって…痛いけど、痛くない。
 

「だから、しょーがないから今日はこのへんで終わりにしとく。古登も、泣くのをやめてくれたし。」
「あ」

気が付くと、あたしの涙はすっかり乾いていた。

正確には、まだ目尻に雫が残っていたようだけど。…とまってた。

カイエは、少しためらいながらも、その手を伸ばして、

指先であたしのその雫をぬぐった。

それからまた、さっきみたいに、くしゃっと笑った。
 
あたしはもう顔も頭もどこもかしくも熱くて仕方なくなって、

もう立ってるのも精一杯になってしまった。
 

その次の瞬間、片目が「そろそろこっちもツッコんでいいかぁああああああ!!!」

って大声で飛び出してきたのとか、

その後ろから寝静まっていたはずの皆が飛び出してきて、

みんなしてカイエをどつきまわしてたのも、なんだかおぼろげで。
 
カイエは「いいいいいつから居たんだーーー!!」って叫んで、

それからみんな変わる変わるいろんなタイミングから聞いてたって口々に叫んでて、

それにカイエはまっかっかになりながら、皆を追い回してた。

あたしはその様子をぼんやりと見てた。なんだか、いつものぼんやりとは、違うかんじ。
 
そんなあたしの肩に、片目がぽんと手を乗せて。

穏やかに微笑って、「よかったな」って小さく呟いた。

 
あたしは―――
ほんとうに久しぶりに。
「うん」って、笑って、いえた。

 
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