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---なんつった。


一瞬反応が遅れた。
俺といくらも変わらねェはずの、野郎から。
聞き慣れねぇものが聞こえた。
いや、そんなこたどうでもいい、この場合。

--入口で立ち尽くす俺に、視線だけ送って、その男は薄い色のグラスを空けた。
流れるように、奴は席を立ち、俺に向き合った。

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…きれいな色の、目をしていた。
優男だという印象だが、深紅色の耳飾りが光るその耳は、見慣れない尖りを見せていた。
--魔族か?
ざわり、と感覚が小さな波紋を作る。無意識に刀に手が触れた。

「そのように構えなくとも良い。我に、…聞きたいことがあるのじゃろ?」
「---…」

緩い笑み。
どうやらこの手の話は慣れてるらしいな。
得体が知れねぇ…だが、期待外れにするにゃあ早過ぎる。

「…場所を変えたい。あんたが知ってたら教えてほしいことがある」
「ほう?場所を変えなければならぬ程の話なのか?」
「…悪いな、気分の問題だ」

実際そうだった。
こいつの持つ得体の知れなさは、こんな狭苦しいところで計れるもんじゃねえ。
…ただの勘だが、無視はできねえ。
物を頼む立場だが、やむを得ない。
拒否されりゃあそれまでだ。

「…その前にひとつ問おうかのう」
「……?」

耳飾りと同じ色の目を、細くして。
奴は自身の顎にその手をかけるようにし、ゆっくりと値踏みをするようにして言葉を発した。

「…お主、ヒトを裁くが為降りてきた神の名を、知ってるかの?」
「………?……」

神?
むしろ言っていることがよく理解できなかった。
知っているはずもなかった。
だがこいつは…『神』を捜してるっつうのか--?
--つい顔に出ちまったと思う。
しまった、と思う間も無く奴の顔は曇った。

「……そうかの。」
「……」
「残念じゃ。…普段ならそれで終わりにしてしまうところなのじゃが」
「-…?」

「…興が乗った。聞かせて貰おうかの」

奴は底の見えない眼をまた細くして、くすりと笑んだ。
…運が味方した。どうやら成功らしい。
内心は怪しい印象が倍増しているが、この際だ。
行ける処まで行くか。
とりあえず外に出ようと、酒場の低い音のする扉を押した。



「さて…、そろそろいいかのう?」
「……ああ…、悪かったな」


城下はどこも活気に溢れ、人目について仕方なかった。
半分は自業自得だが、とにかく奴は目立つ。
外套は鮮やかな青で、何しろ雰囲気からして普通じゃねぇ。
…俺も人のこた言えやしねえが。

あまり地の理に詳しくねぇから、うろうろしてるうちに街を出て、拓けた道に出ちまった。
辺りには何もねぇ。地平線が見えるか見えねえか、くらい。
適当に歩いちまったが、運がよかった。
そこで初めて奴は口を開いた。連れ回しちまったが機嫌を悪くした様子は無い。
…表に出してねぇだけかもしれねぇが。

「--それで、聞きたいこととは、何じゃ?あまりおもしろくないと流石に好ましくないのう」
「…あんたの好みか知らねぇが…、知ってたらどんなことでもいい、教えてくれ。
 --『混沌』ってぇ病、…知ってるか?」
「---」

一瞬、奴は僅かに目を見開いた。


目を伏せ気味にしながら、奴は先程とは少し違う笑みを讃えながら続ける。


「…ほう…、普通の人間がその言葉を知っているとは…」
「--知ってるのか…?!」
「そうじゃな、知らぬとはもう言うまい。そんな悪質な呪いの名を、何故知っている?逆に聞きたいわ」

ビンゴ。
どうやら本物だ。
かまやしねぇ。まずは知ることが先決だ。

「…俺自身が、魔術士に掛けられた。二月ほど前の話だ。治る術を探してこうしてる」
「--ほぅ…お主が。…どちらの眼じゃ?」
「向かって左」

話が通じるのが安心する。
どうやらこの呪いは総じて「眼」に掛けられるものらしい。
…あの熱い痛みが脳裏を走る。

「ほう、二月前でそれか。お主、なかなかの精神と腕を持つと見えるな」
「…どういうことだ?」
「『混沌』は通常、まず侵されて7日を待たずに宿主を喰い尽くす。その魂をな。
つまりは死ぬということじゃ。
だが第一の峠を越すことができれば、その者は呪いの力を受け、自身の能力を
飛躍的に向上させることができると聞く。
それ自体が僅かの可能性じゃ」

…頭領が言っていたとおりだ。
この目が光りを失うその日が--俺が「俺」である、最後の日。
他人から聞かされて、自分の中で変に現実味を増す。

「『混沌』の治療…か。このわしも、実際呪いを受けて、
 またここまで生きていられる人間を見たのは久方ぶりじゃ。
 その前に見た人間がどうなったかは、知らぬ。
 …結論から言って、治療の方法はわしも分からぬ」

「--そう、か…」

…これで判ったことは…まず「受けた」人間は限りなく少なく。
また、「解いた」例があるのかすらわからない、ということだ。
奴の言うことを疑う訳じゃねぇが--情報の信憑性はともかく、やはり一筋縄ではいかねぇようだ。
しばしの沈黙を経てから、奴はぼそりと呟いた。

「…お主、『片目うさぎ』のことは知っているか?」

「…片目…うさぎ?」
「そうじゃ。片目…とはすなわち、お主のように『混沌』を受けた者を指す隠語のようなもの。
お主が『混沌』をこれからも追うと言うのならば。…片目うさぎを捜すことじゃ」

…言葉に優越に似た感触があったが、あえてそれは無視した。
片目うさぎ--つまり、…『混沌』を受けた…

「うさぎ、と言うても本当の兎ではないぞ」
「……ヒトか?」
「うむ。闇世界ではそれなりに有名じゃな。名までは知らぬが…少女じゃ。
その少女は…『混沌』の核に"呪いを分け与えられた"と言う。
受けてから…4,5年以上は経っているとも聞くな」

「…呪いを…分け与えられた…?」
「左様。」
「…俺が今、呪いを受けているっつうことと…何が違うんだ?」
「--そうじゃな」

奴はそこで言葉を切った。
薄い笑みを変わらず絶やさぬまま---明らかな--挑発的な--

「…ここからは…延長料金が要るのう」
「…は…金を取るのかよ…!?……まあ…貴重な情報はありがたいが…」

今一体持ち金はいくらあったか、と朧げに考える。
だが奴は軽く息を吐いてから、朱い眼を真っ直ぐ見据えて、微笑った

「別に金でなくとも良い。--わしは、お主の『能力』に--興味が、ある。」
「----!!」


辺りの空間に含まれる、穏やかな流れを持つ何か。
それが、それらが、空を切る音を持って平穏を裂いた。
---奴が、その『亀裂』を開放した。



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