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本家で開催されております「年末贈り物企画」(ちょ
に便乗致しまして小噺をひとつ。

旦那の話にしてたつもりがいつの間にか紫皇の話になってましたごめんなさい…

そんなわけで追記より

早めに紫皇も登録してこようと思いますorz


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「…あぁ?風漢お前、いい年こいて何青臭ぇこと言ってやがんだ」

「………」

返す言葉も無いように見受けられる。
一見熊のような精悍な男は、その身体を窮屈そうに縮こまらせた。
対して、向かいで胡座をかいている赤茶髪の男は、
つまらなさそうに煙草を燻らせた。

桜牙でも遅く短い冬を迎えていた。
立ち並ぶ桜の枝では、季節を告げるように霧氷が太陽の光を受けている。
人目を避けるように、郷の奥にある森の入口に二人は居た。
そこには狩猟の際に利用される山小屋があり、
部屋の中央では囲炉裏が湯気をあげている。

ヴェイタ―――風漢は、兄分である紫皇に冷ややかに煙草の煙を吹きかけられ、
やや不快そうに眉をひそめた。
だがそれ以上の抗議の意は見せず、ただ軽くため息を吐いてうな垂れた。
本人もそれを甘んじて受け入れているようだ。
そして、頭を垂れたまま、絞り出すようにぼそりと呟いた。

「…柄じゃねぇんだよ…」

「柄もくそもあるか。何様だてめーはよ」

「紫皇だったらどうなんだよ?悩むだろーが!」

「少なくともてめぇよりは割り切れる。ったく、折り入って相談があるってぇから
 何かと思えば。たかが年の瀬の習わしだろ?そんな肩に力入ってどうすんだ」

「……ッそ……」

風漢は――彼にしてはとても珍しく――悩んでいた。
ウィンクルムでは、年末に「贈り物をする」という風習がある。
その年一年で、感謝したいひとに――贈る。
風漢は、その贈り物について、何を贈ればいいのか決め兼ねていた。
いつも自分を支えてくれ、帰りをずっと待っていてくれている――彼女に。

だが生来不器用な男だ。女性に何を贈れば喜んでもらえるのか分からない。
ましてや、自分にとって誰よりも特別な存在だ。
気持ちが込もる分、…わからなくなる。

「このむっつりスケベが」

「何でそうなんだよ!!!」

「自分の女だろ?もう一緒になってそんな短くもねぇんだ、好みくれぇ分かれ」

「……し、紫皇はそう簡単に言うけどなぁ、お…!」

「お前は考えに無駄が多い。戦略は常にあらゆる可能性を考慮すべきだが、
  そこに根底の揺らぎがあるようじゃあ話にならねぇ」

「戦略とこれとじゃ勝手が違ぇだろうが」

「特に差はねぇ。相手の心を読むのは同じじゃねぇか」

「…読む?リタの?」

「そうだ。…頭の悪いお前にわかりやすく享受するが」

「………あぁ」

紫皇はそこで言葉を切り、囲炉裏の灰をカギ棒で音を立ててなぞった。
ぱち、と火の粉が小さく跳ねた。それを、二人は黙って見つめた。
そして、紫皇はその低い声を口に出した。

「お前の女はお前のそのバカみてぇに不器用な性格を知ってるんだろ」

「――…」

「だったらあいつが何をお前に望んでるかくらい、わかるだろうが」

「……」


…分かってら、と風漢は微かに呟いた。
紫皇は黙って、煙草の煙を吸いながら、弟分の言葉を待った。

この男は昔から――考えを言葉にできない。
また言葉にするまで、それを自分の意思だと気付くことすら難しいのだ。
だから、促すようにしてそれを待つ。
紫皇は、表情を変えないまま、――かわらねぇな、と思う。
だがそうしてやることは、風漢が望んでいることだということも、解かっていた。

しかし。
風漢の再び絞った言葉は、紫皇をすこし驚かせた。


「…あいつは。…本当は何もほしくねぇんだ。物なんざ。
 ただ。…一番欲しいものを欲しいと口に出さずに、待ってる。
 …今の俺には、けしてやることができねぇ、…もんを。」


――ふ。

思わず息を出してしまい、それをじろりとにらまれた。
…何だ。そうかよ。

ちゃんと成長しちゃってんじゃねぇの。


「…そこまで解かってんならいいじゃねぇか」

「あ?」

「ほれ、こんなとこで油売ってねぇでさっさと行け」

「な、何だよ紫皇!?何が――」

「まだやれねぇなら、とりあえず今の最上でいいじゃねぇかって話だ。
 それならいけんだろ」

「……――」

「まさかそれもわかんねぇとは言わねぇよなぁ?風漢よ」

「……はっ、悪かったな、紫皇」

「頭領にはきっちり報告しといてやっから安心しな」

「だぁぁあやめろ!!帰ってこれなくなる!!!!」

 

紫皇は、頬が緩むのを感じていた。
決まりが悪そうな顔をしながらも、きっちり頭を下げ、また外へ発った。
…あんなに世話の焼ける弟だったのにな。

短くなった煙草の火を消し、囲炉裏の火も消えたのを見計らい、立ち上がる。
そしてまた、新しい煙草に火を灯す。
意綱にどうやって、おもしろおかしく報告してやろうかを考えると、気分が良かった。
だが、このまま何もなかったことにするのも悪くない、とも思う。

年の瀬に良いもんをもらった。

そんな気分だった。


暗くなりかけた空を見上げると、いつもより空気が冷えている気がした。
紫皇は、煙草の火の色を見ながら、郷への道を戻り始めた。


「…久々に雪でも降りそうだな…」

 

それでもいいと思った。

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