大変永らくお待たせしましt(切断
おおお…夫婦の新しい家族のお名前の命名という
絶大なミッションをありがとうございました
という訳でセンスがちょっと という感じですが以下、小噺。
…旦那、 …予想以上に恥ずかしい人だったようです。
「光漢。」
「…コーカン…」
「光、漢。」
「…コーカン…」
「…字はこう書く。ほら、読んでみな」
「……コー…カン。」
「…………」
「…………」
ふさふさとしたしっぽを遊ばせながら、
たった今命名された家族は嬉しそうにヴェイタの膝の上でおとなしくしている。
夫婦はと言えば、ココリータが漢字の読みをうまくできないということで、
ヴェイタが国の言葉を辛抱強く教えていた。
だがそのうちココリータが頬を膨らませ始めたので、
とりあえずそれは終わった。
「…もう、漢字は読みにくいって言ったろう?なんでつけるんだいっ」
夫に絹の髪、と称された陽に透ける長い髪をかきあげながら、
ココリータは不満げに口を尖らせた。
対してヴェイタはやや眉をひそめながらも、満足げに光漢の頭を撫でた。
「いいじゃねぇか。俺に付けろって言ったのはリタだろう?
センスが良くねぇかも知れねぇがもうこれで決定。いいな?」
「あーーーもう…わかったよ。うー、コーカン…」
しぶしぶ了承する妻をちらりと見やり、少し目を伏せてぼそりとつぶやいた。
「…なんなら呼びやすいように違う呼び方にしたってかまわねぇよ」
「…呼びやすいように?」
「ああ。何もまんま光漢って呼ばなきゃならねぇ訳じゃねぇ。ま、犬が混乱しねぇ程度にな」
「―そうだね!じゃぁ…」
「ん」
「フー」
「…リタ」
「ふふ、冗談だよ」
散々(いろいろなところで)自分と同じ名にされかけていた。
別に嫌な訳ではないが、…自分の留守中にそう呼ばれる「野郎」が自分以外に居て、
彼女の傍にいるのがなんだかおもしろくなかった。
たとえ犬でも。
それは何でなんだろうなぁと思っていたら、
同郷のタタラに「嫉妬か」と手痛いカウンターを喰らった。
今までそんな感情を持ったことがなかった。
…否定したかったが、…残念ながら返す言葉がなかった。
…俺は犬に妬くのか。くそ。
そんな先日のことを思い出し、ややイラついたが上機嫌になったココリータは気付かなかったらしい。
楽しそうに考えていたと思ったら、急にぱっと顔を明るくした。
何かいいことを思いついたときの顔だ。
「じゃあねぇ、…コータ!」
「…えらく人の子っぽい名だな。」
「いいじゃないか。あたしらの息子だよ?」
「――――」
笑顔で。
そうまっすぐ言われた。
コータ、コータと嬉しそうに夫の膝に居た「奴」を大事そうに抱え上げ、
すっかりいつもの調子に戻り、楽しそうに光漢とじゃれ始めた。
「…俺は光漢と呼ぶからな」
「別にいいさ。こっちのほうがしっくり来るに決まってる」
「なんでだよ?」
くるりと光漢を抱えながら、ひらりと回る。
そして真っ直ぐ目を見て、嬉しそうにこう言った。
「"コ"はあたしの一字、"タ"は旦那様の一字。…ほら、合ってるだろ?」
一瞬、とまった。
思い切りぐるりと後ろを向き、ヴェイタは大きな片手で顔面を覆いながらため息をついた。
それを見てココリータは彼の様子が少しおかしいことにふと気付き、
そうっと様子を見守る。
そして、ふわりと微笑んだ。
「…旦那様、気に入ったかい?」
「………まぁ、な」
やや間を置き、そうしぼりだした彼の低い声音にココリータは満足し、
それ以上は何も聞かずに光漢と遊び始めた。
彼女は知らない。
彼が、何故『光漢』と付けたかを。
ひかり。…あいつの、絹の髪だ。
俺には無い、あったけえ太陽の恩恵だ。
…でもって、俺の字。漢。
…息子なら、それでいいだろうが。
…別にいいだろう?…光漢。
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