「…ぅ」
ふ、と。
至極自然に--俺の意識は戻った。
あたたかい。身体が少し冷えているような気がしたが、…あたたかかった。
「…こ こは…」
つい口に出しちまった。
それくらい身に覚えのないところだった。
…白い部屋だ。雰囲気からして医務室か、何か…?
…どこだ…?
警戒心を思い出す、その前に。
…やわらかい、何かがあった。
「……………」
――少女、…だった。
金糸の髪、伏せた長い睫毛は影を頬に落としている。
彼女は俺の寝かされていたベットの、すぐ傍らにいた。
小さく寝息を立てている。ベットの側には小さな椅子があり、そこに腰掛けて。
…いや、なんだ。
そんなことを言ってる場合じゃねぇ、ただ。
…俺は……。
この少女の、ちいさな手を。
何故か…握っていたんだ。
…郷では。
修業や、頭領や紫皇たちとなんやかやしてばかりで。
…今の自分には必要ないから、…女性と極力関わってきた覚えもなかった。
だからと言って苦手な訳でもねぇが――
いや…この子は恐らく、俺より10は下だろう。…女の子だ。
……いや、むしろよろしくねぇだろ。
なんで――なんで、…この子も――俺の手を…?
顔には、ほのかな赤みと、流れた涙が見えた。
…泣いていた?
何故だろうか、俺が知る由もねぇが――少し、痛む。
空いている手を伸ばし、軽く。
…それを、拭った。
ふる、と少女が身震いした。
寒いのか?…なんかかけてやったほうが良いだろうか。
俺は彼女が起きないように、極力。
…静かに、俺自身に掛けられていた薄いシーツを接ぎ、少女の肩に。
……起きなかった。
ふ、と息を吐き、腰を落ち着けた。
つと、…潮の音が聞こえた。
海がちけぇのか、と思った瞬間、外の空気が吸いたくなった。
…空を。見たくなった。
きし、と音を立てやがるベッドに彼女を残し、
俺は風の流れるまま、見慣れない部屋をとおりすぎ、…裸足のまま、外に出た。
なんで、急に空が見たくなったのかは、わからねぇ。ただ――
―――満天。
そこには眩しいくれぇの夜空が広がっていた。
足元には黒く穏やかに波音を返す海がある。
崖っぷちか。いい処に構えやがる。
…不思議な心地だ。
――ここは何処だったか、どのくらい意識がなかったのか、
何故ここにいたんだったかは――すぐに思い出せねぇが。
そんなことより、今は――
…この満天に。…懐かしい郷を想った。
―――元気だろうか。
その時、微かな物音がした。
振り向くと、さっきの嬢ちゃんが、はたはたと掛けてきた。
俺は、その仕草が、なんだか温かく思えて。
自然に--自分の頬が緩むのを感じた。
「……ぁ…」
「…っ」
ぱぁ、と。笑顔がこぼれた---
「くまさん!もう大丈夫なのかい!?」
クマ。
…俺は、自分の身体がぎしり、と硬直するのを感じた。
――少女、…だった。
金糸の髪、伏せた長い睫毛は影を頬に落としている。
彼女は俺の寝かされていたベットの、すぐ傍らにいた。
小さく寝息を立てている。ベットの側には小さな椅子があり、そこに腰掛けて。
…いや、なんだ。
そんなことを言ってる場合じゃねぇ、ただ。
…俺は……。
この少女の、ちいさな手を。
何故か…握っていたんだ。
…郷では。
修業や、頭領や紫皇たちとなんやかやしてばかりで。
…今の自分には必要ないから、…女性と極力関わってきた覚えもなかった。
だからと言って苦手な訳でもねぇが――
いや…この子は恐らく、俺より10は下だろう。…女の子だ。
……いや、むしろよろしくねぇだろ。
なんで――なんで、…この子も――俺の手を…?
顔には、ほのかな赤みと、流れた涙が見えた。
…泣いていた?
何故だろうか、俺が知る由もねぇが――少し、痛む。
空いている手を伸ばし、軽く。
…それを、拭った。
ふる、と少女が身震いした。
寒いのか?…なんかかけてやったほうが良いだろうか。
俺は彼女が起きないように、極力。
…静かに、俺自身に掛けられていた薄いシーツを接ぎ、少女の肩に。
……起きなかった。
ふ、と息を吐き、腰を落ち着けた。
つと、…潮の音が聞こえた。
海がちけぇのか、と思った瞬間、外の空気が吸いたくなった。
…空を。見たくなった。
きし、と音を立てやがるベッドに彼女を残し、
俺は風の流れるまま、見慣れない部屋をとおりすぎ、…裸足のまま、外に出た。
なんで、急に空が見たくなったのかは、わからねぇ。ただ――
―――満天。
そこには眩しいくれぇの夜空が広がっていた。
足元には黒く穏やかに波音を返す海がある。
崖っぷちか。いい処に構えやがる。
…不思議な心地だ。
――ここは何処だったか、どのくらい意識がなかったのか、
何故ここにいたんだったかは――すぐに思い出せねぇが。
そんなことより、今は――
…この満天に。…懐かしい郷を想った。
―――元気だろうか。
その時、微かな物音がした。
振り向くと、さっきの嬢ちゃんが、はたはたと掛けてきた。
俺は、その仕草が、なんだか温かく思えて。
自然に--自分の頬が緩むのを感じた。
「……ぁ…」
「…っ」
ぱぁ、と。笑顔がこぼれた---
「くまさん!もう大丈夫なのかい!?」
クマ。
…俺は、自分の身体がぎしり、と硬直するのを感じた。
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