「---ッ--!!」
焔だった。
あと一瞬、後ろに退いていなかったら絡め取られてた。
奴は赤々とその焔を右の掌に讃え、またそいつらは細ぇ蛇のように。
いくつもいくつも奴を中心に辺りを駆け回っていた。
--こいつ--、魔術士か…!!
「…当てる気だったな」
「避けると思っていたぞ?」
野郎。
「…『混沌』の齎すものについては、未だ謎に包まれている」
「…で?」
「たかが人間が、その悪名高い呪いにどこまで耐えられるのか、と言うのもな」
「--そうかよ」
---なんつった。
一瞬反応が遅れた。
俺といくらも変わらねェはずの、野郎から。
聞き慣れねぇものが聞こえた。
いや、そんなこたどうでもいい、この場合。
--入口で立ち尽くす俺に、視線だけ送って、その男は薄い色のグラスを空けた。
流れるように、奴は席を立ち、俺に向き合った。
いきなり、ぶつかった。
いや--恐らくは、故意。
「ってぇな…ッ何しやがるてめえ!!」
「……いや、ぶつかってきたのはそっちだろうが」
何やらの常套句。
眉を吊り上げて悪意のこもった言葉を並べ立てやがる。どうやら俺は絡まれているらしい。
…都会だなあ。
気付けば仲間と見える連中が集まってきた。
4、5人…面識も何もねェ相手に、そんだけ集めてどうすんだ。
しかもまだ増えそうだな。
予想通りだんだん理不尽な罵倒に変わり、仕舞いにゃその腰のもんを置いていけと来た。
…なるほど、狙いはハナからこいつか。大陸ではやっぱり珍しいのか。
だが---
「生憎…こいつァ他人にやれるような代物じゃねぇんだよ」